国際連合教育科学文化機関(UNESCO)は今年10月15日、アジア・アフリカ6カ国による若者向けAI教育協力プログラムの成果を公表しました。68校の試行校認定や教員研修・共同制作の構想は、日本の国際協働型AI学習を考えるうえでも参考になります。
6カ国で進むAI教育の国際協働
UNESCOは2026年10月15日、中国・深圳で同年7月20日から25日に実施された「Africa-Asia Youth AI Tour」の内容を公表しました。参加したのは中国、タイ、ケニア、ナミビア、コートジボワール、コンゴ共和国の6カ国で、UNESCOの戦略的パートナーCODEMAO、さらにUNESCO情報技術教育研究所(IITE)の支援のもとで実施されています。
この取り組みは、2021年に始まったUNESCO-CODEMAO Youth Coding Initiativeの一環です。狙いは、アジアとアフリカの若者のデジタルリテラシー向上、AI教育協力の促進、そして包摂的な教育のデジタル変革を進めることにあります。
政策対話から生徒の共同制作までを一体化
今回のプログラムは、単発の交流イベントではなく、政策フォーラム、技術見学、そして3日間の生徒向け研修・共同制作を組み合わせた構成が特徴です。7月20日に開かれたフォーラムでは、各国の教育行政関係者、研究者、教育実践者、産業界の関係者らが参加し、AI教育の地域連携、教室での実装方法、イノベーション・エコシステムの共同形成について議論しました。
同時に、生徒の声を正式な議論の中に位置づけている点も重要です。各国の生徒代表は、自らの学習経験や異文化交流の体験、コーディング教育への参加を通じて得た学びを共有しました。AI教育を制度設計だけでなく、学習者の実感や将来像と結びつけて考える姿勢が示されています。
68校を試行校に認定、継続協力の枠組みも
特筆すべき成果として、フォーラムでは計68校が公式な試行校として認定されました。これは、参加校の学習効果が実証されたという意味ではなく、今後の実践展開の拠点として位置づけられたものです。
UNESCOはこの枠組みを通じて、カリキュラム開発、教員の力量形成、学校間交流、生徒の移動やプロジェクト型学習を含む長期的な協力体制を整える考えです。国際会議での対話にとどまらず、各地域・各学校で継続的に実装するための橋渡しを意識した設計といえます。
生徒は国境を越えてAI・プログラミングを共創
今回の7月23日から25日にかけては、各国の生徒が混成チームを組み、3日間のトレーニングと越境型のコーディング・AI共同制作に参加しました。CODEMAOのカリキュラムチームが教育面・技術面の支援を行い、参加者はグループワーク、共同開発、発表準備、最終プレゼンまでを一通り経験しています。
学習活動は、知識のインプットだけでなく、試行錯誤、役割分担、対話、公開発表まで含むフルサイクル型です。最終的にはチームごとの成果物とプロジェクト発表が行われ、審査を経て優秀な参加者にはUNESCOとCODEMAO連名の証明書やトロフィーが授与されました。
日本の学校が読み取れる示唆
日本の学校現場にとって注目したいのは、国際交流を「会話」や「文化紹介」で終わらせず、AIやプログラミングを使った共同課題解決へ発展させている点です。姉妹校交流やオンライン国際交流を実施している学校なら、探究学習や情報科、STEAMの文脈と接続しやすいでしょう。
また、教員研修とカリキュラム開発を同時に進める構想も参考になります。生徒だけが国際協働を体験しても、学校全体の実践として定着しにくいため、授業設計・評価・連携体制まで含めた仕組みづくりが必要です。今回の事例は、AI教育を国内完結で考えず、国際協働型の学びとして再設計する視点を示しています。
💡 先生へのポイント
- 海外交流の既存枠組みがある学校は、英会話交流に加えて「共同で何を作るか」を設定すると学習価値が高まります。
- 情報科、総合的な探究、英語、STEAMを横断し、AI活用の小規模プロジェクトから始めると導入しやすくなります。
- 生徒交流だけでなく、教員同士の授業設計共有や評価基準のすり合わせも先に進めると継続しやすくなります。
まとめ
今回の報告は、AI教育を国際協働・共同制作・教員研修まで含めて設計する動きを示しました。68校の試行校認定は、その実装基盤を広げる一歩として注目されます。日本でも、国際交流をAI時代の探究学習へ接続する発想が今後さらに重要になりそうです。
出典:UNESCO and CODEMAO advance Africa-Asia cooperation in AI education https://www.unesco.org/en/articles/unesco-and-codemao-advance-africa-asia-cooperation-ai-education-through-youth-ai-tour




