文部科学省が視察した戸田市立戸田第二小学校の実践は、生成AIを“答えを出す道具”ではなく“自分の表現を見直す比較対象”として位置づけた点が注目です。教員にとっては、AI活用と学習過程の保障を両立する授業設計の具体例として参考になります。
注目すべきは「先に自分で書く」設計
文部科学省の関大臣が10月2日、埼玉県戸田市立戸田第二小学校を訪れ、ICTや生成AIを活用した授業を視察しました。今回の実践で特に重要なのは、6年生国語において、生成AIに文章を書かせて終わるのではなく、児童が先に自分で台本を作り、その後にAIの出力と比較しながら推敲する流れが明確に組まれていたことです。生成AI活用をめぐっては「使わせるか、禁止するか」の二項対立に陥りがちですが、この授業はその間にある実践的な第三の道を示しています。
この授業設計の価値は、学習の主導権を最後まで児童が持ち続ける点にあります。AIを最初から使うと、語彙選択や構成の試行錯誤といった本来の学習過程が短絡されるおそれがあります。一方で、戸田第二小の実践では、まず自分でブックトークの台本を作成し、その後でAI案を参照するため、児童は「自分の表現」と「別案」とを比較できます。
この順序には大きな意味があります。比較対象があることで、児童は単に直すのではなく、「なぜこちらの表現がよいのか」「どこが自分らしいのか」を考えやすくなります。つまり、生成AIは完成答案の代行者ではなく、思考を可視化する鏡として機能しているのです。
文科省が懸念してきた論点への具体的な回答
生成AIの教育利用では、必要な学習過程が省略されることへの懸念が繰り返し指摘されてきました。今回の実践は、その懸念に対して授業設計で応答した事例といえます。重要なのは、AIの出力そのものの質ではなく、児童がそれをどう扱うかです。
授業を「①自分で書く→②AI案と比べる→③違いを考える→④最後は自分で選び直す」と捉えると、評価すべき対象は最終成果物だけではありません。比較の観点、修正理由、採用しなかった表現の判断など、思考の履歴こそが学びの中核になります。これは今後、作文や発表原稿、要約、意見文など多くの教科場面に応用できる考え方です。
小学校の通常授業で行われた点が大きい
生成AI活用の話題は、実証研究や先進校の特別活動に偏りやすい傾向があります。しかし今回は、小学校の通常教科である国語の授業として示されたことに意味があります。しかも同校では、1年生でプログラミング的思考、3年生で教師自作アプリを用いた協働学習も行われており、ICT活用が単発ではなく、発達段階に応じて積み上げられている様子もうかがえます。
生成AIだけを切り出して導入するのではなく、低学年からの情報活用、試行錯誤、協働、言語化といった学びの土台の上に位置づけている点は、学校全体でのICT設計を考えるうえでも示唆的です。
なお、文部科学省は視察内容について次のように記しています。
「また、6年生が事前に作成したブックトークの台本について、生成AIの出力を参考にしながら自ら判断して推敲を重ね、最終的には自分の言葉を選び取ることの大切さを学ぶ授業の様子、3年生が教師自作アプリを活用して友達と対戦形式で協働して修飾語の役割を学ぶ様子等を視察しました。」
出典:埼玉県戸田市立戸田第二小学校のICTを活用した学びの様子を視察:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2026/20261002_2.html




