ロシア連邦の教育省は今年9月26日、学校におけるAI利用に関する方法論的勧告の内容を公表しました。同年8月31日付の正式文書に基づき、学年段階ごとの使い分けや試験時の扱い、個人情報保護の考え方を整理しており、校内ルール設計の参考になります。
公表の位置づけと学年段階ごとの利用範囲
ロシア教育省は2026年9月26日、学校でのAI利用に関する方法論的勧告を公式に紹介しました。勧告では、児童生徒の発達段階に応じてAIの使い方を分けています。もっとも明確なのは、1〜4年生相当では児童がAIを単独で使用しないという整理です。低学年では、操作の自立よりも、教師の管理下で情報や表現に触れることが前提だと読めます。
5〜9年生相当では、教師の許可のもとで、情報検索や初歩的な整理、難しい概念の補足説明、教材の可視化、簡易なモデリング、仮説の確認といった用途が認められています。つまり、答えを出させるための道具というより、理解を支える補助的なツールとしての位置づけです。
10〜11年生相当では、これらに加えてプロジェクト学習や探究・研究活動での活用が示されています。学年が上がるほど、AIを使う対象が「理解補助」から「課題設定・検証を含む学習活動」へと広がる構成です。
使ってはいけない場面とは
勧告は活用可能性だけでなく、利用を避ける場面も明記しています。代表的なのは、小テスト・試験・学校での中間評価や最終評価です。生徒が自分の知識や技能を示すべき課題では、AI利用は認められません。
また、AIが作成した文章、解答、プレゼンテーション、プロジェクト成果物を、そのまま自分の作品として提出することも不可とされています。これは不正防止の観点だけでなく、学習成果の真正性をどう担保するかという論点でもあります。学校側にとっては、「AI利用の可否」だけでなく、どこまでを支援、どこからを本人の成果とみなすかを明文化する必要があることを示しています。
教員利用は広く認めつつ、最終責任は教師
教員については、授業準備から学習評価の分析、報告書や計画作成まで、かなり広い範囲でAI活用が想定されています。教材、テスト、プレゼン資料、図表、動画素材の作成や適応、情報源の収集・整理・分析などは、日本の学校現場でも関心が高い使い方です。
一方で、AIで作成した教材は、事実関係、教育課程との整合、方法論上の妥当性、児童生徒の年齢への適合を教師が確認しなければならないとされています。AIを使っても、教育内容の責任主体は教師であるという考え方が明確です。授業中の使い方としても、AIの回答の誤りを見つけたり、根拠を検証したりする活動が例示されており、批判的思考を育てる教材としての活用が意識されています。
個人情報と保護者説明が重要論点
勧告で特に実務的なのが、個人情報や機微情報の扱いです。教師には、児童生徒、保護者、教職員に関する情報、成績、所見、児童生徒の作品、校内文書などをAIサービスに入力しないよう求めています。生成AI導入時に起こりやすい「便利だからそのまま貼る」を避ける設計が前提です。
加えて、教育過程でAIを使う場合は、保護者に対して利用について知らせることも示されています。これは単なる同意取得の話にとどまらず、学校が何のためにAIを使い、何を入力せず、どんな教育効果とリスク管理を想定しているかを説明する広報・信頼形成の課題だといえます。
日本の学校への示唆は何か
今回の勧告は、AIを一律に禁止するものではなく、学年段階・評価場面・個人情報保護の3軸で整理した点に特徴があります。日本でも校内ルールを作る際、「授業での活用」「宿題での活用」「定期考査での扱い」「提出物での申告」「個人情報入力の禁止」を分けて定義すると、現場で運用しやすくなります。
また、低学年ほど単独利用を避け、高学年ほど探究的活用へ広げるという考え方は、発達段階に応じた情報活用能力育成の設計として参考になります。生成AIの導入議論が「使うか、使わないか」で止まりがちな学校ほど、こうした段階的な整理は有効です。
💡 先生へのポイント
- 校内ガイドラインは「学年別」「評価場面別」「個人情報別」に分けると明確です。
- 低学年は単独操作より、教師主導でAIの出力を一緒に読む形が安全です。
- 提出物では「AIを使ったか」「どこに使ったか」の申告欄を設けると運用しやすくなります。
- 教材生成にAIを使う場合も、事実確認と年齢適合性の確認は必須です。
- 保護者説明では、利便性より先に入力禁止情報と安全管理を伝えると信頼を得やすいです。
まとめ
今回の公表は、学校AIをめぐる議論を「全面解禁か全面禁止か」ではなく、学年段階と教育目的に応じて整理した点に意義があります。日本の学校でも、発達段階に応じた利用範囲、評価時の禁止、個人情報保護をセットで設計することが、実装を進めるうえで重要になりそうです。




