この度、デジタル・ナレッジ社の比較調査報告書から、小中高教員のAI活用は進む一方、学校としての利用ルール整備が追いついていない実態が見えてきました。校内研修やガイドライン設計を進める際の論点を、大学との比較も交えて整理します。
使っているのに…学校としては決め切れていない
株式会社デジタル・ナレッジ(東京都台東区)のeラーニング戦略研究所は2026年9月25日、「小中高・大学におけるAI活用比較調査報告書」を公表しました。これは新規調査ではなく、2026年に実施・公開した「小中高におけるAI活用実態調査」と「大学におけるAI活用実態調査」を横断的に再編した比較レポート(対象は小中高133人、大学115人のWebアンケート)です。
小中高の回答者では、AIを「ほぼ毎日」または「週数回」使う教員が63.1%にのぼりました。さらに、教育現場でAIが「非常に有用」「ある程度有用」と答えた人は88.7%でした。少なくとも今回の調査回答者の中では、教員個人の利用と有用感はかなり広がっているといえます。
一方で、AI利用に関する校内ルールは十分に整っていません。「特にルールはない」とした小中高は45.1%で、ガイドラインがあるのは28.6%でした。つまり、現場ではすでに使われているのに、学校としての共通理解や運用基準が後追いになっている可能性があります。
小中高と大学で異なる「次に必要な支援」
今回の比較で興味深いのは、学校段階によって求める支援が異なる点です。小中高で最も多かったのは「教員向け研修の充実」63.2%でした。まずは教員が安全に、授業や校務で適切に使えるようにすることが優先課題だと読めます。
これに対して大学では、「盗用・不正利用の検知機能」60.9%が最多でした。大学ではレポートや論文、評価の公正性といった論点が前面に出やすく、小中高とは異なる運用課題が意識されていることがうかがえます。
この差は、AI導入の成熟度の違いとしても見られます。小中高は「まず教員が理解し、共通の使い方を固める」段階、大学は「活用を前提に不正対策や制度設計を詰める」段階に近いのかもしれません。
学校現場は「利用拡大」から「運用整備」の第二段階へ
AI活用の議論は、単に使うか使わないかではなく、「誰が、何に、どこまで、どう使うか」を決める段階に移っています。海外でも、教員向けAI研修制度や学校でのAI利用規則づくりが進んでおり、日本の学校現場も同じ第二段階に入りつつあると考えられます。
特に小中高では、児童生徒の発達段階、保護者説明、個人情報保護、宿題や作文での利用範囲、校務での生成AI利用など、学校全体で足並みをそろえるべき論点が多くあります。個々の教員の工夫に任せるだけでは、学年差・教科差・学校差が大きくなりやすく、トラブル時の説明責任も曖昧になりがちです。
そのため、今後は「禁止か自由化か」の二択ではなく、用途別の整理が重要になります。たとえば、授業準備、教材たたき台、保護者向け文案、校務補助は比較的導入しやすい一方、成績評価、個人情報を含む入力、児童生徒の提出物の丸投げ利用は慎重な設計が必要です。
小規模調査として読みつつ、校内整備の材料にしたい
今回の小中高調査は133人を対象としたWebアンケートであり、日本の全教員にそのまま一般化するのは適切ではありません。ただし、現場感覚として「教員の利用は進んでいるが、学校ルールと研修が追いついていない」という構図は、多くの学校にとって示唆的です。
管理職やICT担当者にとっては、AIの是非を抽象的に議論するよりも、まず現状把握から始めるのが実務的です。校内でどの程度使われているか、どんな用途が多いか、不安は何か、既存の情報モラル・端末利用規程でどこまでカバーできるかを確認するだけでも、次の一手が見えやすくなります。
💡 先生へのポイント
- まずは校内で「教員のAI利用実態」を簡単に把握する
- ルールは全面禁止より、用途別の可否整理から始める
- 研修はツール紹介だけでなく、個人情報・著作権・評価の扱いまで含める
- 児童生徒向け指導と教員向け運用を分けて設計する
- 管理職、ICT担当、情報モラル担当で最小限の共通文書を作る
まとめ
今回の比較調査報告書は、小中高で教員のAI活用と有用感が広がる一方、学校としてのルール整備が追いついていない状況を示しました。これからの焦点は導入の可否ではなく、研修とガイドラインをどう実装するかです。現場任せにせず、学校単位での運用設計へ進めることが求められます。
出典:小中高と大学における生成AI活用に関する比較調査報告書 | eラーニングのデジタル・ナレッジ https://www.digital-knowledge.co.jp/archives/50220/




