慶應義塾大学・安宅和人研究室とマイパレ社が、中高生の探究学習におけるAIの「関わり方」の違いを検証する実証研究を開始します。AIを使うかどうかではなく、どう対話するかに着目しており、探究支援の設計を見直したい学校・教員に示唆のある内容です。
「AIを使うか」ではなく「どう関わるか」を問う研究
生成AIの教育活用では、学習効率や成果向上に注目が集まりがちです。今回の実証研究が興味深いのは、AIの有無ではなく、AIが生徒にどう関わるかによって、探究学習への向き合い方や継続意欲が変わるのかを見ようとしている点です。
慶應義塾大学・安宅和人研究室の研究に、探究学習支援サービス「マイパレ for school」を展開する株式会社マイパレ(東京都世田谷区)が協力する形で進められます。倫理審査は承認済みで、2026年9月19日から協力校と生徒の募集を開始。実施は10月から12月にかけて、全国の中学校・高等学校で予定されています。
探究学習で見えやすい「途中で止まる」課題
総合的な探究の時間では、生徒が自ら問いを立て、情報を集め、整理し、考えを深めていくことが求められます。一方で現場では、テーマ設定の段階では意欲的でも、途中で迷ったり、次の一歩が見えなくなったりして手が止まるケースが少なくありません。
本来は教員やメンターが個別に伴走できれば理想的ですが、授業準備や校務の中で一人ひとりに十分な時間を割くのは容易ではありません。そこでAIが伴走役の一部を担えるのではないか、というのがマイパレの基本的な発想です。ただし、同じような返答をするだけでは、生徒が「また相談したい」と感じる支援にはなりにくいという課題意識も示されています。
比較するのは3つの対話パターン
今回の実証では、AIの関わり方を大きく3つに分けて比較します。1つは、考える中身を深める「認知的支援」。もう1つは、探究の進め方そのものを助ける「メタ認知的支援」。そして、特定の支援スタイルを強調しない標準的な対話です。
ここでのポイントは、AIが答えを与えるかどうかではなく、生徒の思考をどう促し、探究のプロセスをどう支えるかにあります。言い換えれば、「教えてくれるAI」と「考えさせるAI」のどちらが探究心の維持や自走につながるのか、という問いに近い設計です。
対象は協力校の中高生で、最大500名規模を想定。対話形式のレッスンを通じて、テーマ設定から情報収集、整理・分析、まとめ・表現まで、探究の各段階でAIがどう機能するかを見ていきます。
学校側にとっての実務的なメリット
参加校は「マイパレ for school」を無料で体験でき、放課後の有志向けから授業内のクラス実施まで、学校の状況に応じて柔軟に導入形態を相談できます。実証で得られた知見は参加校にレポートとして還元され、今後のプロダクト改善にも反映される予定です。
現場目線では、単なるツール導入の話ではなく、探究支援の設計そのものを見直す機会になりそうです。特に、探究でつまずく生徒に対して、知識提供を増やすべきか、問い返しや振り返り支援を厚くすべきかを考える材料になります。
生成AI活用の評価軸を広げる試み
教育分野の生成AI研究は、得点向上や作業効率化といった測りやすい成果に寄りやすい傾向があります。今回の研究は、内発的動機や探究の継続といった、やや捉えにくいが本質的な側面に踏み込もうとしている点で注目されます。
探究学習では、「正解に早くたどり着くこと」よりも、「問いを持ち続けられること」や「自分で進める感覚」を育てることが重要です。AIがその力を弱めるのか、逆に支えるのかは、性能だけでなく対話設計に左右される可能性があります。学校がAI導入を検討する際にも、機能一覧ではなく、どのような声かけや伴走が実装されているかを見る視点が求められそうです。
💡 先生へのポイント
- AI活用を検討する際は、「答えを出せるか」より「問いを深められるか」を確認する
- 探究で止まりやすい場面を洗い出し、認知支援とメタ認知支援のどちらが必要か整理する
- 実証研究への参加は、校内の探究指導の型を見直す材料にもなる
- 生徒の満足度だけでなく、継続率や再相談のしやすさも評価観点に入れたい
まとめ
今回の産学連携の実証研究は、生成AIを探究学習にどう組み込むべきかを、対話の質から捉え直す試みです。AIが「教える存在」になるのか、「考え続ける伴走者」になるのかは、これからの探究支援設計を考えるうえで重要な論点になりそうです。
出典:生徒が自分のテーマを楽しみながら自走できるようになるには?慶應義塾大学 安宅和人研究室とマイパレ社、AIの「関わり方」の違いを検証する実証実験の協力校・生徒を募集 | 株式会社マイパレのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000157819.html




