この度の国立成育医療研究センターの調査で、保護者の半数超が有害コンテンツ対策などの「構造的な規制」を要望しました。学校にも制度改善を求める声が多く、子どものデジタル環境を家庭任せにしない設計が教育現場の論点になりそうです。
半数超が求めたのは「家庭の工夫」ではなく社会的な対策
国立研究開発法人国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)は、全国50自治体から無作為抽出した小学5年生〜高校生とその保護者を対象に、子どものデジタル環境に関する調査結果を2026年9月に公表しました。
今回注目したいのは、自由記述に回答した保護者1,530人の声です。生成AIそのものの調査ではありませんが、SNS、AIコンパニオン、ディープフェイク、推薦アルゴリズムなど、子どもを取り巻くデジタル環境が複雑化する中で、教育現場にも直結する示唆があります。
自由記述の分析では、56.2%がフィルタリングやSNS利用制限などの「構造的な規制」を求め、40.6%がリテラシー教育を含む「制度の改善」を求めました。家庭内での努力や困りごとにとどまらず、国・企業・学校など外部の主体に具体的な対応を求める声が目立った点が重要です。
構造的な規制の要望先では、企業などが37.9%、国が25.6%で上位でした。一方、制度の改善では学校への要望が39.0%で最も多く、企業などの32.5%を上回っています。保護者は「使い方は家庭で教えるべき」とだけ考えているのではなく、学校にも環境整備と教育の両面で役割を期待していることがうかがえます。
学校に向けられた期待はリテラシー教育だけではない
調査では、構造的な規制の中でも内容に関する制限、機能に関する制限、デバイス制限に要望が分かれました。特に学校支給デバイスについては、要望先として学校が76.1%と突出しています。これは、1人1台端末が当たり前になった今、学校が配る端末の設定、利用時間、アクセス制御、家庭との連携方法まで含めて、運用責任が強く意識されていることを示します。
学校への期待は、単に情報モラルの授業を増やすことだけではありません。端末管理の初期設定、校内外での利用ルール、相談体制、トラブル時の対応フローなど、制度として子どもを守る仕組みづくりが求められています。生成AIの活用を進める学校ほど、「便利だから使わせる」だけでなく、年齢に応じた制限や見守りの設計が欠かせません。
AI時代の論点は「使うか」より「どう守るか」へ
今回の調査はAI利用の是非を問うものではありませんが、教育AIの周辺ニュースとして重要です。理由は、子どものデジタル接触がSNSや動画、ゲームにとどまらず、対話AIや自動生成コンテンツへ広がっているからです。保護者が感じている「家庭だけでは追いつかない」という実感は、AI時代にさらに強まる可能性があります。
たとえば、年齢に不適切な出力、もっともらしい誤情報、依存を促す設計、なりすまし画像や音声といった問題は、家庭内ルールだけで完全に防ぐのが難しい領域です。だからこそ、学校は「AIを教える」だけでなく、「AIを含むデジタル環境からどう子どもを守るか」という観点で、保護者説明や校内ガイドラインを再設計する必要があります。
海外で進む制度論と日本の学校現場への宿題
プレスリリースでも、オーストラリアや欧米で未成年者のSNS利用制限、年齢確認の厳格化、プラットフォーム責任強化が進んでいることに触れています。日本でも法制度の見直しが議論される中、学校現場は制度が整うのを待つだけでは不十分です。
現場で先にできるのは、保護者任せにしない情報提供と運用の透明化です。どのアプリやサービスを授業で使うのか、どこまで学校が管理するのか、家庭に何を依頼するのかを明確にするだけでも、保護者の不安は下げられます。特にAI活用を進める自治体や学校では、学習効果の説明と同じくらい、安全設計の説明が求められるでしょう。
💡 先生へのポイント
- 「家庭でルールを決めてください」だけで終わらせず、学校としての管理範囲を明文化する
- 1人1台端末は、フィルタリング設定・利用ログ・相談窓口まで含めて運用を見直す
- AIやSNSの授業では、活用メリットと同時に誤情報・依存・なりすましのリスクも扱う
- 保護者会や学校だよりで、学校が守る部分と家庭に協力を求める部分を切り分けて伝える
まとめ
今回の調査は、子どものデジタル環境対策を家庭の努力だけに委ねることへの限界を、保護者1,530人の声として示しました。学校にはリテラシー教育だけでなく、端末運用やルール設計を含む制度的な役割が期待されています。AIを含む新しいデジタル環境が広がる今こそ、家庭・学校・企業・行政の分担を具体化することが重要です。
出典:【こどものデジタル環境に関する調査報告】 保護者は、国・企業・学校など幅広い対象に対策を求めている | 国立成育医療研究センター https://www.ncchd.go.jp/press/2026/0916.html




