中東のオマーン教育省は2026/27年度から、学校教育向けのAIフレームワークを本格実施します。授業導入だけでなく、教員研修・デジタルリテラシー・実証までを一体で進める設計は、日本の自治体や学校のAI導入計画にも参考になります。
学校教育のAI導入を国家レベルで制度化
オマーン教育省関係者は2026年9月6日、2026/27年度の新学年から学校教育向けのAIフレームワークを実施すると説明しました。対象は政府学校に通う約87万6,000人の児童生徒で、1,298校に及ぶ大規模な取り組みです。
AI活用を単独の教科施策として扱うのではなく、教育の質向上、デジタル変革、将来に必要なスキル育成の一部として位置付けている点が特徴です。
4つの柱は使い方よりも運用設計
今回示されたAIフレームワークの柱は、責任あるAI利用、教員研修、デジタルリテラシー、実証プロジェクトです。注目したいのは、先に授業実践だけを広げるのではなく、安全性や理解、教員の指導力、検証の仕組みまで含めて設計していることです。
責任あるAI利用では、学習支援の利便性だけでなく、適切な使い方やリスクへの配慮が前提になります。教員研修を柱に据えたことで、現場任せにせず、授業設計や校務での活用判断を支える体制づくりを進める姿勢も読み取れます。さらに、児童生徒側のデジタルリテラシーを並行して育てることで、AIを使えるだけでなく、安全に目的に応じて使い分けられる状態を目指しているといえます。
プラットフォーム整備とラボ設置を同時に進行
基盤整備として、教育プラットフォーム「Noor」はすべての学校に導入されました。加えて、教育当局にはAI専用ラボが整備されており、学校現場での実装を支える環境づくりも進んでいます。デジタル化の文脈では、2年生から12年生向けに約387の実験ができる仮想科学ラボの活用や、1970年から2006年までの学籍記録のデジタル化も進められています。
つまり、AI導入は単発の新施策ではなく、既存の教育DXの延長線上に置かれています。プラットフォーム、データ、実験環境、研修の受け皿がそろっているからこそ、AI活用も継続的な運用に乗せやすくなります。
数学・理科・ロボティクスと接続した展開
同国ではAIだけを独立して強調するのではなく、数学、物理、化学、生物、ロボティクスなどの拡充とあわせて進めています。科学フェスティバルの準備も進められており、AIを含む先端分野を、探究や競技、進路指導と結び付けながら広げていく構想が見えます。
この設計は、AIを単なるツール利用に閉じ込めず、理数教育やものづくり、将来の職業観までつなげる発想です。学校でのAI活用を考える際にも、生成AIの操作方法だけでなく、教科学習や探究活動の中で何を育てるのかを明確にする重要性を示しています。
授業例の配布で終わらせないこと
日本でも生成AI活用の授業例やガイドラインは増えていますが、現場では安全な利用環境、教員の研修機会、実証の設計、評価方法が十分にそろわないまま導入が進むケースもあります。オマーンの事例は、AI授業のアイデア提供だけでは不十分であり、自治体や学校設置者のレベルでロードマップを描く必要があることを示しています。
とくに重要なのは、基盤整備→教員研修→児童生徒のリテラシー育成→実証→評価という流れを一体化することです。AI活用を「やってみる」で終わらせず、どの場面で有効か、どのリスクにどう備えるかを検証しながら進める視点が欠かせません。
💡 先生へのポイント
- AI導入は、まず安全な利用ルールと校内合意の整備から始める
- 研修はツール操作だけでなく、授業設計・評価・情報モラルまで含めて考える
- 理科、数学、探究、情報など既存教科と結び付けると実践しやすい
- 小規模な実証授業を行い、学習効果と課題を記録して次年度計画に生かす
まとめ
今回オマーンは2026/27年度から、学校向けAIフレームワークを87万人規模で実施し、全校プラットフォーム導入やAIラボ整備とあわせて展開します。授業活用だけでなく、基盤整備、教員研修、リテラシー、実証をセットで進める設計は、日本の学校や自治体がAI導入を制度化するうえで有力な示唆を与えるでしょう。
出典:New academic year to place more emphasis on innovation and AI - Times of Oman https://timesofoman.com/article/176523-new-academic-year-to-place-more-emphasis-on-innovation-and-ai




