中南米ブラジルの国家教育審議会が、教育現場でのAI利用に関する初の全国規制案を今年9月に承認しました。発達段階とリスクで線引きする設計は、日本の学校向けガイドラインづくりにも参考になります。
全国共通のAIルール案が前進
ブラジルの国家教育審議会(CNE)は2026年9月1日、教育分野におけるAI利用の初の全国的な規制案を承認しました。報道によると、この案は今後、教育相の承認を経て正式化される見込みです。正式化されれば、公私立の学校・大学を含む全国の教育機関に適用され、各機関には約12か月の移行期間が設けられるとされています。
今回の特徴は、単にAIの利用可否を問うのではなく、教育上の責任や人間の判断を中心に据えたことです。AIは学びを広げる補助として位置づけられ、教育的意図、教師の媒介、最終判断の責任を置き換えてはならないという考え方が明確に示されました。
小学5年生までは自由利用を認めない
特に注目されるのが、幼児教育から小学校5年生までの扱いです。この段階の子どもについては、生成AIを含むAIツールへの直接的・自律的・個別的・無監督のアクセスを認めない方針が示されました。
一方で、教師が事前に計画し、授業の中で仲介・指導する形であれば活用は可能です。つまり全面禁止ではなく、発達段階に応じて「自由利用は不可、教育活動としての利用は可」と整理している点が重要です。あわせて、子どもの個人データ保護を強め、保護者・家庭への説明も求める方向が示されています。
4段階のリスク分類で禁止領域を明確化
この規制案では、教育現場でのAI利用を低リスク、中リスク、高リスク、過剰リスクの4段階に分類しています。
低リスクには、教材整理、アクセシビリティ支援、評価を伴わない文章見直し、授業準備などが含まれます。中リスクは、学習者と対話するチューター、形成的フィードバック、校務支援のアシスタントなどで、人による確認や記録が必要とされます。高リスクには、自動採点、生体情報を使う監視、学習者のプロファイリング、選抜や認証に関わる用途が入り、継続的な監督や監査、異議申し立ての仕組みが求められます。
過剰リスクに分類された利用は、禁止対象です。例として、感情認識、社会的スコアリング、AIだけで進級・退学・処分を決める運用、主観的判断を要する評価の自動化、広告目的でのデータ利用などが挙げられています。学校でのAI活用を認めつつ、任せてはいけない領域を先に定める設計といえます。
学校に求められるのは透明性とAIリテラシー
規制案は、学校や大学に対して透明性とガバナンスの整備も求めています。具体的には、AIシステムを使っていることの周知、導入判断の記録、出力結果や教材内容の人間による見直し、情報セキュリティやバイアスへの配慮などです。
また、AIは教育課程の中で使うだけでなく、学ぶ対象としても扱うべきだとされています。児童生徒には、AIの仕組み、データの役割、偏りや限界、デジタル市民性、学術的誠実性、メタ認知などを段階的に学ばせる方向です。基礎教育では発達に応じて慎重に、高等教育では専門的・職業的活用も視野に入れるという整理も見られます。
日本の学校が参考にできる視点
日本でも生成AIの学校利用は広がっていますが、学齢や用途をまたいで一律に考えがちです。今回のブラジル案は、発達段階、利用目的、権利侵害の可能性を組み合わせてルールを設計する考え方を示しています。
とくに参考になるのは、「使ってよい場面」を増やす議論だけでなく、「AIに委ねてはいけない判断」を明文化している点です。採点、進路判断、懲戒、感情推定のように、教育的・倫理的な影響が大きい領域ほど人間の関与を強く残すべきだという発想は、日本の自治体や学校法人のガイドライン整備でも有効でしょう。
💡 先生へのポイント
- 小学校段階では、生成AIの自由利用可否ではなく「教師が設計・仲介しているか」で運用を見直す
- 校内ルールは「学年」「用途」「扱うデータ」「評価への影響」で分けると整理しやすい
- 自動採点や進路推薦などは、最終判断を必ず人が担う前提を明文化する
- 保護者説明では、利便性だけでなくデータ保護と禁止領域もセットで伝える
まとめ
今回のブラジルの規制案は、低年齢層の無監督AI利用を抑えつつ、教師主導の教育活用は認めるバランス型の設計です。日本でも今後は、単純な解禁・禁止ではなく、発達段階とリスクに応じた学校向けルールづくりが重要になりそうです。
出典:CNE veta uso de IA sem supervisão para alunos até 5º ano - 01/09/2026 - Educação - Folha https://www1.folha.uol.com.br/educacao/2026/09/conselho-veta-uso-de-ia-sem-supervisao-para-alunos-ate-o-5o-ano-do-fundamental.shtml




