富山第一高等学校が、兵庫の通信制サポート校・青楓館高等学院のノウハウをもとにしたAI×データベース型の教育データプラットフォームを今年9月から導入予定です。分散しがちな学習・探究・部活動の記録を統合し、教員の伴走支援や進路指導の質向上につなげる動きとして注目されます。
他県の学校が連携~その導入の概要
青楓館高等学院(兵庫県明石市・芦屋市)では、自校で開発・運用してきた生成AI活用の知見をもとに、富山第一高等学校(富山県富山市)へ教育データプラットフォーム「TOMIICHI THREADS(仮称)」を提供します。2026年6月には教員研修を実施しており、同年9月からシステム導入を開始する予定です。
今回の取り組みの特徴は、単なる生成AIの利用促進ではなく、校内に散在する学びの記録を統合し、教員が生徒理解と進路支援に生かせる形へ再構成しようとしている点にあります。
背景にある「記録の分散」課題
富山第一高等学校では、教科学習に加え、探究活動、芸術活動、35の部活動、生徒会、学校行事など、多様な学びが日常的に生まれています。一方で、それらの記録は活動ごとに分かれ、定性的な振り返りと成績・模試などの定量データも別々に管理されていたため、生徒の全体像を捉えにくい状況がありました。
その結果、せっかくの経験が「楽しかった」で終わりやすく、学びや成長を言語化して進路選択に結び付けることが難しい場面もあったといいます。約1,200人規模の学校で、複数のデータベースを横断しながら一人ひとりを見る負担は小さくありません。
教員研修ではAI時代の役割を再確認
2026年6月29日に実施された教員研修では、教育AI活用協会理事で青楓館高等学院学院長の藤原照恭氏が講師を担当しました。テーマは「AI時代における教員の役割と、生徒との向き合いを考える」。
研修は「守りのAI」「攻めのAI」「人の役割」の3部構成で進行し、ハルシネーションへの注意や個人情報の扱いといった実務上の留意点も共有されました。加えて、答えを素早く得る「ファストAI」と、対話を重ねて思考を深める「スローAI」という使い分けを示し、教員自身がAIとの距離感を考える設計になっていた点も実践的です。
また、青楓館高等学院での探究事例や、学びの記録を蓄積して進路支援に活用する仕組みを実際に触れる機会も設けられ、AIを単なる効率化ツールではなく、学びの可視化を支える基盤として捉える視点が共有されました。
「縦糸」と「横糸」で生徒の学びを編み直す
「TOMIICHI THREADS(仮称)」は、生徒の活動を時間軸の「縦糸」と、学習・部活動・探究・生徒会など活動領域の「横糸」で捉え直す発想が中核です。これまで別々に存在していた記録を、生徒を中心に再接続することで、多面的な成長の軌跡を見えやすくします。
AIは、その統合されたデータの整理や分析を支援する役割を担います。教員が情報収集や読み解きに費やす時間を減らし、その分を面談や個別支援に振り向けることが狙いです。重要なのは、AIが指導を代替するのではなく、教員にしかできない対話や判断を支える基盤として位置付けられている点でしょう。
総合型選抜や探究評価にも波及の可能性
今後、青楓館高等学院はこの仕組みの提供先を、他の高校や学習塾にも広げる方針を示しています。特に注目したいのは、多様な学びの記録を総合型選抜などの進路活動に生かせる形で言語化・蓄積する構想です。
探究、課外活動、委員会、部活動といった経験は、蓄積の仕方次第で生徒の強みを示す重要な材料になります。学校現場にとっては、活動の「実施」で終わらせず、「記録」「振り返り」「接続」までを一連の設計として考える必要性が、今後さらに高まりそうです。
💡 先生へのポイント
- 学習・探究・部活動の記録が分散していないか、まず校内の現状を棚卸しする
- 振り返りを感想で終わらせず、「何を学び、どう変わったか」を残す設問設計を意識する
- AI活用は効率化だけでなく、生徒理解を深めるためのデータ整理支援として考える
- 総合型選抜や面談を見据え、日常記録を後から使える形で蓄積する視点が重要
まとめ
富山第一高等学校の今回の導入は、生成AI活用を個別の業務改善にとどめず、学校全体の学びの記録基盤へ広げようとする事例です。教員の時間創出と生徒理解の両立を目指す取り組みとして、高校や塾にとっても参考になる動きといえます。
出典:AI×データベースによる教育データプラットフォームの構築へ | 株式会社青楓館のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000054.000106384.html




