京都市教育委員会がこの度、学校教育活動における生成AI利用方針を公表しました。小中学校は直接利用を原則見送り、高校は活用を推進する段階別方針で、情報モラル教育の設計を考える材料になります。
段階別に分けた京都市の生成AI方針
京都市教育委員会は2026年10月22日、学校教育活動における生成AIの利用方針を公表しました。特徴は、校種ごとに対応を明確に分けた点です。小・中・小中学校では、将来的な活用を見据えつつも、現時点では児童生徒による生成AIの直接利用を、試行的な取組を除いて実施しないとしました。一方で高等学校では、学習活動における直接的な生成AI活用を各校で推進するとしています。
この整理は、生成AIを「今すぐ使うかどうか」と「使う前に何を学ぶか」を切り分けて考えていることを示します。発達段階や情報活用能力に応じて、まずは理解と判断力の育成を優先する姿勢が打ち出された形です。
小中学校は情報モラル教育を先行
京都市は、小・中・小中学校の全学年で、「情報発信・情報の見きわめ」をテーマにした情報モラル教育を年間原則2コマ以上実施するとしています。特に小学5年生と中学1年生では、「生成AIの性質やリスク等」を必須テーマに位置付けました。
ここで重視されているのは、情報の真偽を確かめるファクトチェック、知的財産権など自他の権利の尊重、そして生成AIをツールとして適切に捉える視点です。つまり、AIに触れる前段階として、誤情報、著作権、出力の鵜呑みといった論点を体系的・系統的に学ばせる設計になっています。
生成AIの授業というと、実際にチャット形式で使わせる実践に注目が集まりがちです。しかし今回の方針は、直接利用の有無にかかわらず、AI時代に必要な読み解く力や判断する力は育成できるという考え方を示しています。
GIGA端末では原則利用制限
運用面で注目したいのが、GIGA端末での扱いです。京都市では、小・中・小中学校の児童生徒が使う一人一台端末について、生成AIの利用を原則として制限しています。これは校内ネットワークだけでなく、自宅など別のネットワークに接続した場合も対象で、端末自体で利用できない運用です。
学校現場にとっては、方針だけでなく端末運用まで揃えている点が重要です。ルールを示しても端末側で使えてしまうと、学校間・教員間で対応がぶれやすくなります。京都市の事例は、教育方針とICT管理を一体で設計する必要性を示しています。
教職員利用と高校活用は前進
児童生徒の直接利用を抑える一方で、京都市は教職員による生成AI利用を進めています。Microsoft Copilotの利用は令和6年度2学期から開始しており、校務等での活用を進めていると明記しました。
また高校では、学習活動における直接利用を各校で推進します。これは、校種によって求められる到達点が異なるという判断です。高校段階では、レポート作成、探究活動、情報科の学習、プロンプト設計や出力検証など、実践的なAI活用経験を教育の中に位置付けやすくなります。
小中でリスク理解を重視し、高校で実装を進める流れは、自治体として比較的はっきりしたロードマップといえます。
他自治体にも広がる論点
今回の方針は、全国の学校現場にも示唆があります。特に論点になるのは、「AIについて学ぶこと」と「AIを使って学ぶこと」をどう分けるかです。たとえば、小中学校でも、AIが生成した文章の誤りを見抜く活動や、著作権・個人情報・バイアスを考える授業は十分に実施できます。
一方で、直接利用を制限する場合、実際の操作経験や適切な利用判断をどの段階で身に付けるのかという課題も残ります。高校での推進がその受け皿になる一方、接続期のカリキュラム設計や、教員研修の充実が今後の焦点になりそうです。
💡 先生へのポイント
- 小中では「使わせるか」より先に、誤情報・著作権・個人情報・出力の限界を扱う授業設計を整理する
- 生成AIを直接使わなくても、AI生成文の検証や比較読解でAIリテラシーは育成できる
- 高校では、利用許可だけで終わらせず、目的設定・検証・引用のルールまでセットで指導したい
- 端末制御と校内ルール、保護者への説明を一体で設計すると運用が安定しやすい
まとめ
京都市は今回、小中学校では生成AIの直接利用を原則制限しつつ、情報モラル教育を全学年で強化し、高校では活用を推進する方針を示しました。AI活用の可否を一律に論じるのではなく、発達段階に応じて「学ぶ内容」と「使う場面」を分けて設計する重要性が改めて浮かび上がっています。
出典:京都市教育委員会事務局:学校教育活動における生成AIの利用について https://www.city.kyoto.lg.jp/kyoiku/page/0000314603.html




