この度の海外で働く日本人への調査から、生成AIは翻訳や文章作成で日常的に使われる一方、最終的なトーン調整や現地感覚の判断は人に残っている実態が見えました。学校現場でも、AI活用と確認・編集の役割分担を考える材料になります。
海外の現場でAIはすでに日常業務の一部
株式会社ロコタビ(東京都千代田区)が運営する海外在住日本人による現地支援サービス「ロコタビ」は、2026年7月末~8月初めにかけて海外8カ国(米国・カナダ・オランダ・韓国・タイ・オーストラリア・台湾・ベトナム)で働く日本人26名を対象に、「海外ビジネス現場における生成AIの利用実態に関する調査」を実施しました。
そのうち、生成AIを仕事で使っている人は88%、そのうち58%が「ほぼ毎日」利用していることが判明。用途は「翻訳・多言語対応」83%、「メール・文章作成」78%、「情報収集・要約」65%が上位です。ChatGPTとGeminiが最多で、ClaudeやMicrosoft Copilotも使われていました。
注目したいのは、生成AIが特別な実験段階ではなく、すでに日々の実務に組み込まれている点です。利用者の87%は、1年前より周囲の企業で業務利用が増えたと感じています。効果としては「作業時間の短縮」74%、「翻訳・多言語対応が容易になった」70%が挙がり、海外のように言語の壁が大きい環境では、AIの即効性が特に高いことがうかがえます。
学校でも、英語科だけでなく、国際交流、留学生対応、保護者向け案内、学校紹介文、海外姉妹校との連絡など、多言語が関わる業務は増えています。今回の結果は、生成AIが教員の周辺業務を補助するツールとして実用段階に入っていることを示しています。
便利でも「確認の仕事」はむしろ増える
一方で、AIを使えばそのまま完成するわけではありません。課題のトップは「回答の正確性」で87%、次いで「機密情報・個人情報の扱い」48%、「情報の古さ」39%でした。「確認・修正作業が増えた」「AIの回答を検証する作業が増えた」という声もあり、時短と検証負担が同時に存在しています。
これは学校現場でも同じです。たとえば、保護者向け通知の下書き、授業プリントの要約、面談記録の整理などにAIを使う場合、事実確認や表現の妥当性確認は必須です。特に児童生徒の情報を扱う場面では、入力内容の管理と利用ルールが欠かせません。AI導入の議論は「使うか使わないか」ではなく、「どこまで任せ、どこから人が責任を持つか」に移っています。
「平均」はAI、「現場感覚」は人という分担
自由記述で印象的だったのは、「下書きはAI、最後のトーン調整は人」という共通認識です。北米では、日本的な丁寧さや謝罪表現が強すぎると、かえって相手を不安にさせたり、自信がない印象を与えたりするという指摘がありました。韓国では敬語やフォーマルさの段階、台湾ではネイティブ表現との微妙な差が問題になるなど、言葉の正しさだけでは越えられない壁が見えます。
この示唆は教育にも重要です。AIは「文法的に正しい英文」や「無難な説明文」は作れても、相手との関係、学校文化、地域性、学齢に応じた言い回しまで自動で最適化できるとは限りません。たとえば同じ連絡文でも、新入生保護者向け、受験生向け、地域住民向けでは、必要な温度感が異なります。AIの出力をそのまま使うのではなく、学校の文脈に合わせて仕上げる編集力が、これからの教職員により求められそうです。
ルール未整備のまま利用が進むリスク
調査では、利用者の83%が「明確な組織ルールがない」または「個人判断」で生成AIを使っていました。積極的に推奨している組織は少数です。現場が先に動き、ガイドラインが追いついていない構図が見て取れます。
学校でも同様の状況は起こりやすいでしょう。個々の教員が便利さから使い始める一方、校内で入力してよい情報、利用可能なサービス、成果物の確認手順、児童生徒への指導方針が定まっていないと、事故や混乱につながります。特に、授業でのAI利用と校務でのAI利用は分けて考える必要があります。前者は学習指導、後者は情報管理と業務設計の問題だからです。
💡 先生へのポイント
- 翻訳、要約、案内文の下書きなど、定型性の高い業務から小さく試す
- AI出力は「完成品」ではなく「たたき台」と位置づける
- 個人情報や成績情報は入力しない運用を徹底する
- 保護者文書や対外発信は、学校のトーンに合っているか必ず人が最終確認する
- 児童生徒にも「AIで作る力」だけでなく「AIを見抜き、直す力」を教える
まとめ
今回の調査は、生成AIが海外の実務で広く使われながらも、最後の判断や文脈調整は人が担っていることを示しました。日本の学校でも、AIを業務効率化の道具として取り入れつつ、確認・編集・配慮を担う人の役割を明確にすることが、実装の第一歩になりそうです。
出典:【海外8カ国・在住日本人調査】海外ビジネス現場の生成AI利用実態──約9割が業務利用、翻訳・文章作成が最多 | 株式会社ロコタビのプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000156.000024321.html


