兵庫県では青楓館高等学院の生徒が、今年の夏休みに神戸市立高校生向けの探究ワークショップを企画・進行しました。生成AIを使って地域の未来と自分の進路を結びつける実践は、探究設計や生徒主体の学びづくりの参考になります。
高校生が“教わる側”から“支える側”へ
通信制高校サポート校である青楓館高等学院(兵庫県明石市・芦屋市)は、神戸市教育委員会からの依頼を受け、2026年7月31日に神戸市立高校の生徒を対象とした探究ワークショップを実施しました。特徴的なのは、企画・進行を担ったのが教員や外部講師ではなく、同学院の生徒だった点です。日頃の学習で培った生成AIの活用経験をもとに、他校の高校生の探究活動を支援する立場として関わりました。
通信制高校という枠組みは、しばしば「支援を受ける側」と見られがちです。一方で今回の取組は、学校種別の違いを越えて、経験を持つ高校生が別の高校生の学びを支える実践として注目できます。生徒同士だからこそ生まれる近い目線や対話のしやすさが、探究の入り口づくりに機能したといえそうです。
ワークショップで扱った3つの問い
このワークショップは、神戸市のALネットワーク事業「国内フィールドワーク(長崎)」の一環として行われました。参加したのは神戸市立高校の生徒16名。テーマは「2035年の神戸」を見据え、自分と地域の未来をつなぐことです。
生徒たちは生成AIと対話しながら、次の3つの問いに沿って考えを深めました。
- 10年後の神戸はどうなっているか
- その中で自分はどう神戸に貢献したいか
- そのために今から何を始めるか
単にAIの使い方を学ぶのではなく、地域課題の見立て、将来像の言語化、行動計画への落とし込みまでを一連で扱っている点が実践的です。年間プログラムの導入企画として位置づけられており、今後は現地での探究、中間報告会、探究フォーラムでの最終発表へとつながっていきます。
参加生徒の反応から見える価値
ワークショップ後のアンケートでは、回答した12名全員が満足度を5段階中4以上と回答しました。また、「神戸や長崎の未来と、自分の将来を結び付けて考えることができたか」では8名が4以上、「自分はどのように生きたいかを考えるきっかけになったか」では10名が4以上でした。
参加者からは、「普段の使い方以上にAIの活用方法があると知れた」「高校生の皆さんが丁寧に教えてくれて分かりやすかった」といった声が寄せられています。ここからは、AI活用の技術面だけでなく、同世代ファシリテーターの存在が安心感や納得感につながったことも読み取れます。
探究学習では、正解のない問いに向き合う初期段階で手が止まりやすいものです。そこにAIを“答えを出す道具”ではなく、“視点を広げる対話相手”として位置づけることで、思考の足場をつくった点は現場で応用しやすいポイントです。
学校現場への示唆
今回の事例は、生成AI活用と探究学習を結びつける方法としてだけでなく、生徒主体の学びをどう設計するかという観点でも示唆があります。特に注目したいのは、教える役割を大人が独占せず、一定の経験を持つ生徒に委ねていることです。
高校では総合的な探究の時間や地域連携活動で、発表中心に終わってしまう課題も少なくありません。今回のように、未来の地域像→自分の役割→今の行動という順で問いを設計すると、テーマが自分事になりやすくなります。さらにAIを補助線として使えば、発想の広がりや言語化の支援も期待できます。
また、通信制高校の生徒が他校を支援する構図は、学びの多様性を社会に伝える意味でも重要です。学校の種類ではなく、どのような経験やスキルを持ち、どう他者の学びに還元できるかに焦点を当てる実践として捉えられます。
💡 先生へのポイント
- 探究の導入では「地域の未来」「自分の役割」「今の行動」の3段階で問いを立てると、思考が具体化しやすいです。
- 生成AIは結論を出す道具ではなく、視点出しや仮説整理の伴走役として使うと効果的です。
- 生徒ファシリテーターや異校種連携を取り入れると、参加者の心理的ハードルを下げやすくなります。
- 年間探究の初回に短時間の対話型ワークショップを入れると、その後のフィールドワークや発表活動につなげやすくなります。
まとめ
今回の青楓館高等学院の取組は、生成AIを活用した探究支援と、生徒同士が学び合う設計を組み合わせた実践例です。地域の未来を考える問いを通じて、自分の進路や生き方まで接続している点は、高校現場の探究設計に大きなヒントを与えます。
出典:高校生同士が学び合う探究ワークショップ。青楓館高等学院の生徒が、AI活用の経験を活かし神戸市立高校生の探究活動を支援 | 株式会社青楓館のプレスリリース https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000048.000106384.html


